定期借地権付きマンションの魅力とリスクを徹底解説
2025.10.03
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定借付き区分所有とは?基本の仕組みを解説
「定借付き区分所有物件」とは、土地に定期借地権を設定し、建物の区分所有権を販売するという契約形態のマンションです。
この仕組みは、借地借家法第22条等に基づく定期借地契約を活用しており、契約期間終了後には土地を貸主に返還することが前提となっています。
通常の分譲マンションでは、購入者が土地・建物の所有権を取得しますが、定借付き物件では、土地は借りる(使用権)、建物は所有するという形になります。
そのため、永住目的ではなく、ライフステージに応じた住まい方を選ぶエンドユーザーに支持されています。
また、契約終了時には土地が確実に返還されるため、貸主側にとっても再開発や建替えの計画が立てやすく、都市部の土地活用の選択肢として注目されています。
なぜ今、定借付きタワマンが販売されるようになったのか?
都市部では再開発や建替えが進む中、土地や建物を柔軟に活用する手段として、定期借地契約が注目されています。
特に、将来的な建替えや用途変更を見据えたデベロッパーにとって、契約期間終了後に確実に返還される定借物件は魅力的です。
一方、購入者側にも変化が見られます。資産形成よりも「住環境」や「立地」を重視するエンドユーザーが増加しており、DINKs(共働きで子どもがいない夫婦)や高齢者層を中心に、定借物件への関心が高まっています。
さらに、定借期間を長期化することで住宅ローンの利用がしやすくなったことも、人気の背景の一つです。
契約期間が50年〜70年と長期化することで、金融機関の評価が改善され、ローン商品が整備されつつあります。
実際の定借付き区分所有物件の事例紹介
以下は、全国で供給されている定期借地権付き区分所有マンションの代表的な事例です:
- シエリアタワー中之島(関電不動産開発):定借期間 約72年
- シエリア覚王山(関電不動産開発):定借期間 約60年
- ジオタワー大阪十三(阪急阪神不動産):定借期間 約60年
- ジオ板橋大山(阪急阪神不動産):定借期間 約73年
- パークホームズ南麻布ザレジデンス(三井不動産レジデンシャル):定借期間 約50年
- パークタワー渋谷笹塚(三菱地所レジデンス):定借期間 約70年
- ブリリアシティ西早稲田(東京建物):定借期間 約72年
これらの物件は、定借でありながら高立地・高品質を実現しており、エンドユーザーのニーズに応える住まいとして注目されています。
定借付き物件のメリット・デメリット
【メリット】
- 高立地・高スペック物件に手が届く
- 固定資産税がかからないケースもある
- ライフステージに合わせた住み替えがしやすい
- 相続対策としても有効(資産評価が低いため)
- 契約終了による確実な返還で、貸主の再開発計画が立てやすい
【デメリット】
- 契約期間終了後の住み替えリスク
- 契約の終期が近づくと資産価値としての評価が難しいため、売却が困難なケースも
- 契約書の書面化や事前説明義務など、法的手続きが煩雑になることも
- 住宅ローンの融資条件が厳しくなる場合がある
- 融資期間が契約期間に制限されるケース
- 金融機関によっては融資対象外となる場合
- 担保評価が所有権物件より低くなる傾向
おわりに
定借付き区分所有物件は、「所有」から「利用」へと住まいの価値観が変化する中で、エンドユーザーにとって魅力的な選択肢となりつつあります。
契約形態やローンの条件など、従来の分譲とは異なる点も多いですが、住環境を重視する人々にとっては、非常に合理的な住まい方と言えるでしょう。
【用語解説】
エンドユーザー:投資目的ではなく、実際に住むために不動産を購入・利用する人。
DINKs:Double Income, No Kids(共働きで子どもがいない夫婦)を指す言葉。
定期借家契約:契約期間を定め、更新のない賃貸契約のこと。
区分所有:マンションなどの建物の一部(専有部分)を所有する権利。
借地借家法第38条:定期借家契約の根拠となる法律条文。契約期間の定めと更新不可が特徴。
担保評価:金融機関がローン審査時に物件の価値を評価すること。
再開発:都市部の老朽化した建物や土地を再整備する事業。
使用権:所有権ではなく、一定期間その物件を使う権利。
一般定期借地権:一定期間後に土地を返還することを前提とした借地契約。
ZEH-M仕様:集合住宅向けの省エネルギー基準を満たした設計。