現場監督必見!2025年から始まる熱中症対策義務化の背景と実践ガイド
2025.06.20

2025年6月1日から施行された新たな措置では、WBGT(暑さ指数)や作業環境に基づき、事業者に熱中症対策の実施を義務付ける。違反した場合には、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられるという厳しい内容だ。これは単なるルールではなく、働く人々の命を守るための「当たり前」の基盤である。
はじめに
日本の猛暑は、今や**“災害級”が当たり前**。中でも屋外作業を担う建設現場では、熱中症による事故が年々増加し、大きな社会問題となっています。2025年6月、政府は建設業などに対し、熱中症対策を事業者の義務とする制度を施行しました。本記事では、深刻化する現場の実態と制度の中身、そして**“命を守る文化”への転換に必要な取り組み**を詳しく解説します。
① 建設業の現場で進む危機――なぜ増える熱中症事故
猛暑が常態化する日本の夏において、屋外作業を担う建設業の現場は、年々深刻さを増しています。特に2024年には、建設業における熱中症による死傷者数が228人、うち死亡者が10人にのぼり、3年連続で増加。全業種の中でも際立って多く、重大な社会問題となっています。
背景には、建設現場特有の作業環境があります。まず第一に挙げられるのが、強烈な直射日光と照り返しによって過酷な高温環境に晒されるという特性です。アスファルトやコンクリートの上での作業は輻射熱を生み出し、体感温度をさらに押し上げます。加えて、ヘルメットや作業着、安全靴といった装備は熱を逃がしづらく、体温の上昇を助長してしまうのです。
また、現場では「体調不良を我慢して働く」文化や、「休憩=怠けている」という暗黙のプレッシャーが根強く残っていることも、対策を難しくしている要因の一つです。具合が悪くても上司に申告しにくい、休憩を取ることに罪悪感を感じてしまう――そんな心理的ハードルが、初期症状の見逃しや重症化を招く温床となっています。
さらに、人材不足による労働力の逼迫も深刻です。少ない人数で複数工程をこなすため、長時間の連続作業や、炎天下での無理な稼働が強いられているケースも少なくありません。「人が足りないから休めない」状況が事故を誘発している側面も見逃せません。
これらの要因が重なった結果、建設業の現場では、いまだに「熱中症は自己管理の問題」として片付けられることもあり、組織としての安全マネジメントの構築が急務とされています。
② 義務化された対策の中身――3つの柱で命を守る
こうした背景を受け、政府は2025年6月1日より、建設業を含む作業現場での熱中症対策を事業者の義務とする制度をスタートさせました。この制度では、以下の3本柱が柱として位置づけられています。
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早期発見体制の整備
熱中症は早期対応が何より重要です。事業者は、作業員が自らの不調をすぐに報告できる体制を整え、定期的な声かけや健康状態の確認、巡回点検などを行う必要があります。中には、スマートウォッチなどのウェアラブル端末を導入し、心拍や体温の異常を自動検知して共有する仕組みを整えている企業もあります。
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対処手順の作成と周知
熱中症の兆候が見られた際に、どのように対応すべきかを明文化した**「行動マニュアル」の整備と訓練が求められています。例えば、「異常を感じたら作業を中断し、日陰や休憩所で体を冷やす」「水分を補給し、回復しない場合はすぐ救急搬送」といった流れを現場の全員が理解し、実行できる状態を作ること**が肝心です。
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対象作業の明確化
義務の対象となるのは、WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温31度以上という危険な環境下で、1時間以上または1日4時間以上作業する業務です。この基準を超える場合は、対策の実施が法律で義務化されます。
加えて、対策には空調服や冷却インナー、個人用の携帯WBGT測定器の利用など、テクノロジーを積極的に取り入れる企業も増えています。中には、作業計画を暑さ指数に応じてリアルタイムに調整する**「AIスケジューリングシステム」**を導入する動きもあり、熱中症対策は「現場任せ」から「組織的なマネジメント」へとシフトしています。
③ 単なる罰則ではない――変わる労働観と企業責任
この法令改正は、単に事業者に罰則を課すことが目的ではありません。最も重要なのは「命を守るという社会的責任を明文化」することにあります。一部の企業ではすでに自主的な熱中症対策が進められていましたが、今回の法制度により、すべての事業者が「命を守る最低限の義務」に取り組むことが社会全体で共有された形となりました。
また、建設業界全体にとっても、これは**「暑さを前提とした新しい働き方」への転換を促す大きな契機**となります。例えば、午前と午後の作業時間帯を短縮してこまめな休憩を挟む、酷暑日には作業を原則停止する、あるいは早朝・夜間へのシフトなど、気候に応じた柔軟な働き方への改革が求められ始めています。
そして何よりも大切なのは、すべての作業員が「今日は大丈夫」と思える環境を整えること。現場監督や経営者が、「利益」や「納期」ばかりに気を取られず、「人命こそが最大の価値である」という意識を根づかせていくことが、企業文化の未来を左右するのです。
おわりに――義務から文化へ、そして“安心して働ける現場”をつなぐパートナーとして
災害級の猛暑が常態化する日本の夏。建設業をはじめとした屋外作業の現場では、熱中症対策の強化が命を守るための最優先事項となっています。しかし真に目指すべきは、「罰則があるから守る」のではなく、「誰もが自然に守る文化」が根づくこと。その実現には、働く“人”の声に耳を傾け、思いやりのある環境づくりが不可欠です。
私たちは、人と現場をつなぐ人材紹介のプロフェッショナルとして、「安心して働ける現場を選びたい求職者」と「安全な労働環境を築きたい企業」の架け橋となることを使命としています。
求職者の皆様には、健康と働きがいを両立できる職場をご紹介し、納得のいくキャリア選択をサポート。企業の皆様には、即戦力となる人材のご提案はもちろん、定着や安全対策を見据えた運用アドバイスも行っています。
熱中症対策をはじめとした職場環境の整備は、働く人の命を守るだけでなく、組織全体の信頼と持続可能性を高める大きな投資です。もし、「本当に人が安心して働ける現場をつくりたい」とお考えなら、ぜひ私たちと一緒に、次の一歩を踏み出してみませんか。