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家賃は見直せる?借地借家法第32条で知る賃料増減額請求権の基本と実務対応

2025.09.12

オーナーが変わって、急に法外な家賃値上げの通知が来た。などの事例が最近増えています。他方、貸主の立場では「税金や修繕費が増えたから家賃を上げたい」と思うこともあるでしょう。こうしたケースで、借地借家法第32条では「賃料増減額請求権」が定められています。この権利は、契約書に「家賃は変更できない」と書かれていなければ、一定の条件を満たせば請求が可能です。この記事では、賃料増減額請求権の仕組み、行使方法、契約書との関係、裁判になった場合の流れまで、実務に役立つ視点で詳しく解説します。

1. 賃料増減額請求権とは?──借地借家法第32条の基本構造

借地借家法第32条は、建物の賃料が**「不相当」となった場合に、借主・貸主のいずれからでも賃料の増減を請求できる権利(賃料増減額請求権)**を定めた条文です。

この「不相当」とは、以下のような事情によって判断されます:

  • 税金や維持費の増減
  • 建物の価格の変動
  • 経済事情の変化(インフレ・デフレなど)
  • 周辺相場との乖離

この権利は形成権とされ、相手の同意がなくても意思表示が到達すれば効力が発生します。つまり、契約書に「家賃は変更できない」と書かれていなければ、請求が可能です。


2. 普通借家契約における賃料増減額請求権

普通借家契約は、契約期間が満了しても借主の希望があれば更新されるのが原則です。長期的な契約関係が続くため、経済状況や物件の状態が変化することも多く、賃料の見直しが必要になる場面が多いです。

このため、借地借家法第32条の賃料増減額請求権は、普通借家契約において非常に重要な役割を果たします。

  • 借主・貸主のどちらからでも請求可能
  • 契約の条件にかかわらず請求できる
  • 契約書に「賃料変更不可」と記載されていても、借主の減額請求権は無効とされる可能性が高い

つまり、普通借家契約では、契約期間中でも状況に応じて賃料の見直しが可能であり、柔軟な対応が求められる契約形態です。


3. 定期借家契約における賃料増減額請求権

定期借家契約は、契約期間が満了すると自動的に終了する契約であり、更新の制度がありません。契約期間が限定されているため、契約内容の安定性が重視される傾向があります。

このため、定期借家契約では、以下のような温度感での対応が必要です:

  • 契約書に「賃料は変更しない」と明記されている場合、増額請求は認められない可能性がある
  • ただし、借主による減額請求は、強行法規に基づき、契約書で排除しても無効となる可能性が高い
  • 災害や経済事情の激変など、例外的な事情があれば、特約があっても増額請求が認められる場合もある

つまり、定期借家契約では、契約書の内容がより強く効力を持つため、賃料増減額請求権の行使には慎重な判断が必要です。契約書の文言と実際の事情を照らし合わせながら、冷静に対応することが求められます。


4. 実務上の注意点と交渉のポイント

賃料増減額請求権を行使する際には、以下の点に注意しましょう:

  • 請求は書面で行う(内容証明郵便が望ましい)
  • 請求の効力は相手に到達した時点から将来に向かって発生
  • 裁判で争う場合は、調停を経て訴訟へ進む流れが一般的
  • 裁判確定までの間は、借主は「相当と認める賃料」を支払えば契約解除にはならない

また、交渉を円滑に進めるためには、以下の資料を準備すると効果的です:

  • 周辺相場の調査資料
  • 建物の評価資料(築年数、設備、立地など)
  • 税金や維持費の変動資料

感情的な交渉ではなく、法的根拠に基づいた冷静な説明が重要です。専門家(弁護士・行政書士・不動産鑑定士)への相談も有効です。

終わりに

賃料増減額請求権は、賃貸経営におけるリスク管理や収益の安定化に直結する重要な制度です。不動産管理会社やオーナーにとっては、適正な賃料設定を通じて物件価値を維持し、借主との信頼関係を築くための手段となります。また、こうした法制度に関心を持つ求職者にとっては、不動産業界でのキャリア形成において不可欠な知識です。弊社は人材紹介事業を通じて、不動産業界に精通した人材のマッチングを支援するとともに、不動産業を本業とする企業として、賃料交渉や契約見直しなどのコンサルティングも行っております。制度の理解と実務の橋渡しを、ぜひ私たちにお任せください。

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